たまたまみの魚書店へようこそ。
私がこの記録をしていくうえで「表紙」が本の決め手にかなり関わっていると言う話は耳が痛くなるほど言わせて頂いているかと思うのですが、私の中の「表紙」は「帯」も含めての物なのです。何度も重版された物やネット販売の本などは「帯」なしで売られていることが多く、少し寂しい気持ちになります。
「帯」がないから本の質が落ちる。なんてことはありえないのでないところで何も問題はないのですが、やっぱり目を引くワードが描かれているのは「帯」なのであって、「表紙」だけでは伝えきれない小説の良さを知らせるためには、やはり「帯」は欲しいんですよ…
ただ、「〇月〇日続編発売!」とか「今一番売れているミステリー!」などと、現在進行形の話題が描かれた「帯」は使用期限的なものがあるのでしょうね。いつまでたっても同じものを使い続けていると「いつの話?」という事になってしまいますし、どれだけ人気の小説でも外されていて当然なのですが、
…なんかしっくりこないんですよね。分かりますか…?
今回はそんな「帯」の無い状態で購入した小説をご紹介したいと思います。
『月の扉』
こちらは『石持浅海』さんの作品です。これってかなり有名な小説ですよね…?私は『石持浅海』さんの「殺し屋、やってます。」を先に知り、その後にこちらの存在を知ったので、23刷発行の物を購入しました。それは「帯」も無くて当然です。
ただこちらの小説、「表紙」がとてもシンプルなんです。題名の通り「月」が真っ黒な背景にあるだけという本当にシンプル。そのおかげか「帯」がない事に凄く寂しさを感じてしまって、「表紙」を決め手にする私は「うん…」と購入するのを少しためらってしまいました。
ただ重版数が23。またあらすじを読むと「各種ランキングで上位を占めた超話題作!」ですよ?面白くないわけがない内容だったので購入しました。
お話は沖縄・那覇空港で起きたハイジャック事件です。ハイジャックとはいっても、離陸する前の機内という奇妙な状態で、制限時間はたったの2時間。要求もどこか「…そんなことで良いの?」と思ってしまうようなこと。なのにシビア。ハイジャック犯が予想していない事が次々と引き起こされて、展開がかなり面白いです。
そしてこの機内では推理が繰り広げられるのですが、推理をするのは乗客の一人の男性。そして職業を疑う程に鋭い目を持っていて、この本を読み終えた今も彼が何者なのかは明らかになていません。しかし『月の扉』の続編として彼の推理を主としたお話が3作も出ているのです。まだ全然手を付けられていないのですが、
…何者なのか凄く気になるほどに、鋭いんです。
『石持浅海』さんの小説ならではと言って良いのかもしれませんが、どの小説も「クリア」な感じがするのです。なにが?と言われたら分かりませんが、全体的に「クリア」「ホワイト」という言葉が似合うような気がします。
他にも何作か読ませて頂いているのですが、言葉の風通しのよさに反して内容が濃い。とでも言うのでしょうか…『月の扉』も、スンスンと話が進んでいくのに対して、話の重みはどんどん増していくという何とも面白い構造となっていました。
予想外の展開。これが1つの小説、2時間という時間の中におさめられていて「やっぱりこの人の書く小説が好きだ」という気持ちになりました。小説…というよりかは『石持浅海』さんの考え方。と言った方がただしいかもしれません。
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この表紙のシンプルさ。びっくりするほどにシンプル。これだけ面白いのだからもっとデカデカと主張してもいいのに。と思う反面、これが良いのかもしれない、とも思うような思わないような…
最後まで読んでいただきありがとうございました!またのご来店お待ちしております!